□ダークシード



moN : H・R・ギーガーっていう画家、知ってる?
aI : えーーと、確かエイリアンとかの美術の、あの、なんかすごい気持ちが悪いというか、不気味な絵を描く人ですよね。
moN : そうそう。非常に独特の空間を作り出せるすごい力のある人なんだけれどもね、そのH・R・ギーガーが美術を担当している作品と言うのがあるんだよ。
(※本当は、美術を担当しているとは言えない)
aI : ほお、それはなんだかすごそうですね。
moN : ああ、すごいんだよ。ただし、一般的な意味とは違う意味でなんだけれどもね。
aI : やっぱりクソゲーなんですか?
moN : やっぱりクソゲーなんですよ。すごいよ。傑作クソゲーだから。
 もっともH・R・ギーガーがゲームデザインをしたわけじゃないだろうから、別に彼に罪は無いと思うんだけれどもね。
aI : へー。ジャンルは何なんですか?
moN : まあ、アドベンチャーって言うんだろうな。あれは。
aI : 「って言うんだろうな」ですか。
moN : まあ、ジャンル自体は結構ちゃんとわかるよ。ただね。まあ、はじめのグラフィックがすごいんだ。まずセガサターンを起動した瞬間に白人のムサイ親父が、うおおぉ、て顔をして迫ってくる
 あ、ちなみに、そのムサイ親父が主人公だから(笑)
aI : おお。なんだか、はじめからすごい雰囲気が漂ってますね(笑)
moN : まあ、序の口。序の口。
 その後ね、「どうやら夢だったようだ」ということで、そのおっさん、マイクドーソンという名前なんだけれどもね、彼が、ベットから立ちあがって、自分の部屋をうろうろするところにはじまるのね。
aI : おっさんのうろうろする風景(笑)
moN : まあまあ、その程度で笑ってちゃ駄目だよ。
 で、まあ、特に何をすればいいかわからず、そのオヤジをカーソルで誘導していくんだけれどもね、なんかこう、「頭が痛い、頭が痛い」とそのオヤジが呟くわけ。
aI : 頭が痛いとぼそぼそ呟くおっさんのいる風景(笑)
moN : いやいや、あなた、笑いすぎだから。(笑)
 でね、そのおやじの家をうろうろとまわるんだけれども、その最中ずっと「頭が痛い、頭が痛くて死んでしまいそうだ。今朝起きてからずっと頭がいたい。」という言葉をずっと連呼しつづけるんだ。
 「シャワーだ。頭が痛くて破裂しそうだ。」
 「ロビーだ。頭が痛い」
 「外へ出よう。あの夢を見たせいか頭が痛い。」
 「街へ行こう。頭が痛くて死んでしまいそうだ。」
という感じに。もう、ものを見たら、「頭が痛い」だからね。
aI : なんで、そんなに頭が痛いんですか?
moN : 頭の中にエイリアンが入り込んでるから。
aI : それ、頭が痛い、どころじゃなく、死んじゃうじゃないですか(笑)
moN : いーや。マイクドーソンは死なない。
aI : まあ、いいですけど(笑)
moN : でさ、ゲームやってると次第にプレイヤーも頭が痛いと連呼されているうちに本当になんだか頭が痛いような気がしてくるんだけどね、
aI : (爆笑)
moN : 笑わない、笑わない(笑)
 本当に皆、頭の痛みを訴えてくるから。オレもなんか、頭が痛くなってきたしね。
aI : 迷惑だ(笑)すごい、迷惑だ(笑)
moN : それで、こう、街へ行って薬局へ入ろうとしたら、「シャワーも浴びずに人と会いたくない!」とか、マイクドーソン言いはじめて、薬局へ入ってくれないから。
 まるで、思春期の女子中学生みたいな潔癖症ぶりを発揮するキレイ好き中年オヤジ、マイクドーソンを甘くみていた、してやられたりって感じだね。
aI : (爆笑)
moN : それでさ、しょうがないから、一回、自分の家へ戻って、シャワーを浴びるわけだよ。「頭が痛い」とか言いながらね。
aI : まだ、言ってるんですか(笑)
moN : もう、いつまででも言いつづけるから(笑)
 それで、こう、ようやくシャワーも浴びたし、よしっ、ってことで薬局へ入るわけよ。それで薬局へ入るでしょ。「薬局だ。頭が痛い」とか、言いながら、薬局に入っていって、薬を棚からとろうとしたら「薬局の店員だ。頭が痛くて破裂してしまいそうだ。」「薬局の店員だ。頭が痛くて死んでしまいそうだ」とかって言うばかりで、薬がとれないんだよ。
aI : それはどうするんですか?頭が痛い(笑)
moN : 頭が痛い。それで、どうすれば、頭の痛みをおさえるのかわからないじゃない。頭が痛くて死んでしまいそうだ。(笑)
aI : エイリアンが頭の中に入ってるんだったらどうしようもないって感じですけれどね。頭が痛くて破裂してしまいそうだ(笑)ああ、口癖になる(笑)
moN : しょうがないから、説明書を読んだらさ、この説明書がすごいんだ、また。(笑)
aI : 説明書はクソゲーの重要アイテムの一つですよね。やっぱり(笑)
moN : よくわかってるじゃない。そうなんだよ。本当に。
 でね、説明書を読むでしょ。いやあ、もう、これ説明書だけで満腹ですって感じなんだけれども、まずパラパラっと開くとキャストの章があるでしょ。キャスト紹介ね。これがもう、ぶっとんでるんだ、本当に。
 例えば「警官」ね、どんな紹介があるのか、というと
(説明書をめくる)
オーケー、墓の周りでぶらぶらしてる奴は、それがだれでも、刑務所に入れる。以上終わり!そういうことだ。
 日が暮れてから墓地をうろついている奴等を、何回私が捕らえたか聞いたらあんたは驚くだろうよ
。」
aI : ぶはっ(大爆笑)
 ちょっと、その説明書見せてください
moN : どうぞ。
aI : すごい。しかも、なんかシリアスな絵柄でそんなこと書いてある(爆笑)
moN : 何を言ってるんだい、キミは、全く。これは真剣なゲームだから。間違ってもウケねらいとかじゃないから。
aI : (爆笑)
moN : で、キャスト紹介もすごいいいところ目白押しなんだけれども、次、「禁断の章」ね。
aI : 「禁断の章」?
moN : そうそう、ちょっと、めくってみて、20ページ。
aI : なんか、クリアーまでの手順らしきものが全部書いてある……(笑)
moN : なにしろ、禁断だからね。でも、そんなことでおどろいちゃいけない。ちょっと説明書返して、
aI : はい。
moN : 一日目「洗面台の上の薬戸棚の中に、アスピリンが無限にあるのを見つけるだろう」
 これで、頭の痛みがひくから。
aI : (爆笑)
  ええ、そんなんでいいんですか…(笑)しかも無限…(笑)
moN : まあ、このぐらい常識だから。(笑)
 続けるよ。
 「町に入ると、まず図書館と食料品店にいこう。
 図書館では、無口な司書の前の床に落ちているヘアピンを拾わなければならない。しっかり見て。ほら、あった!」
 突然、ヘアピンを拾うことを強要されるドーソンだから。
 これ、何がヘアピンなのかさっぱりわからないし、そもそもヘアピンを拾わなければいけないって絶対に思いつかないからね。
aI : つらい(笑)
moN : 次ね、だいぶとばして、2日目ね。
「……しかし、次のダークワールドへの旅に備えて、独房の中にアイテムを仕込んでおく必要がある……手袋とお金とヘアピンをここに置いていくのだ。(あなたはこの単純なグッズが古き神の世界で役立つことを驚くだろう。)
aI : それ、驚きすぎだから(爆笑)
moN : 「警官があなたの家を監視している。まもなくあなたは監禁される。
 ただ、刑務所脱獄カードを持っているので、すぐに出られる。
………物音を聞いた警官がやってくると、刑務所脱獄無料カードを手渡す。
警官はあなたを釈放するので、隙を見て彼らの銃を盗み、警察署から出る。
aI : (大爆笑)
 それ、何なのか、ぜんぜんわからない。何なの、ドーソン(笑)
moN : サンフランシスコの元広告プロデューサー。
aI : 元広告プロデューサー、すごいわけわかんないことになりながら、警官から銃を盗んでるし…(爆笑)
moN : 「さて、デルバートとの約束は6時だ。
 彼は、庭には現れず、あなたの家のガレージの側で待っている。
 デルバードはあなたを誘い、棒を投げて犬に取りに行かせる遊びを始める。
 明らかに重要な問題を抱えている様子だが、スコッチを勧めるまで完全にあなたを無視している
。スコッチを飲んだ後、別れを告げ、犬を連れていってしまう。
 忘れていった棒を手に入れよう。」
aI : (爆笑)
moN : 「デルバートとの約束のために、時間がなくなっている。
 これからは、2〜3の小さなヘマも、命取りになるだろう
。」
aI : そんな、わけのわからんオヤジにために死にそうになってドーソン…(爆笑)
moN : 次、飛ばして三日目ね。
 「アスピリンを飲んで、シャワーを浴びる。
 ドーソンは、今日から最高速度で動かなければならない。
aI : なんなんだ、ドーソン(笑)
moN : 「…あなたは、地球を救い、自分自身の脳を救ったのだ。
 しかも、女の子まで手に入れている!」
これでラストね。
aI : いやあ、わけがわからないですねえ。(笑)
moN : 全く、どうして、こんなに真剣な内容がわからないかな、キミは(笑)
あと、最後に説明書の後の方のスタッフ紹介ね。「DARK WORLD ART : H.R. Giger's fantastic library」と書いてあるのはいいとしてさ、ちょっとその上の方ね「PRODUCER」と「DESIGNERS」のところね、ほらここに「Mike Dawson」って
aI : マイクドーソン!(爆笑)
moN : このオヤジ、完全に自分のためだけにこんなわけのわかんないゲーム作ってるからね。すごいよ。偉大だよMike Dawson(笑)。
 ただものじゃないよ、本当。(笑)

2001-7-8

(C)Akito Inoue