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2005年04月10日(はてなダイアリーバックアップ用ミラー)

「からっぽの権威」化装置:ファミ通クロスレビュー

 昨日の記事について松谷さんのコメントは、自分がフォローしなかった部分をざらっと書いてくれていて、とてもいい指摘でした。感謝。議論としてもほぼ同意です。

 ただ一応、何点か。

『パラッパ』登場時には、従来のゲーム好きは「単純」って評価しかできなくなって、たしか殿堂入りさせなかったんだよね。

 これについて、一応当時のファミ通確認しますた。

 サワディ・ノダ「8」、ローリング内沢「9」、イザベラ永野「9」、忍者増田「5」で、合計得点は、「31」で確かに殿堂入りしてませんね。今だったらシルバー殿堂入りしてるところなんですが、この頃って「32点以上を殿堂入りとする」というシステム*1が初めて採用されてから三週間後*2だったので、惜しくも後一点足らず殿堂入りならず、という形のようです。

 5点をつけた忍者増田のコメントは確かに松谷さんの記憶通りで、

…斬新な内容だが、ラップのリズムにのれない御仁には、ただのボタン押しゲームということになっちゃうだろうし。拙者も残念ながらそっちのクチ。…

 という記述が見えます。

 ただ、忍者増田以外は、8点、9点、9点ですから「ピタリとはまると超楽しい」「すごく単純。なのに、夢中になってしまう」「スゲー楽しい」などなどみんな絶賛してますね。

 個別の話で議論してても微妙にマヌケかもしれませんが(すみませんw)、この程度なら「小規模な統計調査としてのクロスレビュー」はけっこううまく機能していた感じがします。この路線ならぜんぜん悪くないですね。むしろ歓迎したい。これを見る限り、この当時はまだ言うほど「古いレビュー基準と実態が齟齬」は起こってる感じじゃない*3。斬新なものに4人中の1人がついていけないというのはしっくり来ます。

 昨日のエントリの注でちょろっと書きましたが、殿堂入りシステムっていうのが「権威化」を支えてしまったというのもあるんですよね。「総合点」で問われるから、誰か一人が低い点数を付けてしまうと「殿堂入り」としてカウントしなくなってしまう。中央値ではかればパラッパは8.5だけれども、総合点÷4 をした平均点だと7.75点になっちゃう。こういう形で成立した「権威としてのクロスレビュー」としては、一人が好き勝手につけるような「小規模な統計調査としてのクロスレビュー」ができなくなっちゃう。「新しい価値」に全員のレビュアーがついていくように強制されてしまう。

 殿堂入りシステムこそは「権威化」を加速したものですけれども、まさにこれが「からっぽの権威」を作り出すための装置に他ならないのではないかと。


[関連エントリ→http://d.hatena.ne.jp/hiyokoya/20050807#p1 ]

*1:32点ではじめて殿堂入りする、というシステムであるために、90年代末には殿堂入りさせる/させないを意識したがゆえの「31点止め」があるのかどうか、ということで業界関係者の間では気にされていたらしいです。永倉にゅうさんの「LOVE GAMES」による検証によれば、合計点数の分布はだいたい正規分布を描いており、特に作為的に31点が増加しているのは認められないとのことですが、32点・31点のソフトの売り上げTOP5を並べてみると、31点のソフトの方が倍近く売れているということが明らかであるということが提示されています。この「31点」「32点」というのが一般ユーザーとファミ通編集者サイドとの受け止め方の違いを示す分水嶺なのかもしれませんね。雰囲気的に。

*2:確認した限り、96年11月22日号(No414)でSS『デジタルピンボール ネクロノミコン』が9.8.8.7で殿堂入りをしたのが、殿堂入りシステムの最初みたいです。これって、すっごいこっそりとはじまってるんですね実は。

*3:とは言っても、その10ヶ月前に『ポケットモンスター』に8.7.7.7とか付けてたりもしますが。松谷さん的な議論をする上ではポケモンに対するこの評価のほうがあからさまでわかりやすいですね。「ソフトウェア的な見地からの使い勝手=「仕様」が悪いもの、を指していると思うんですね。けっしてゲームデザインやコンセプトの評価を中心としていたものではないんじゃない」という議論がそのとおりだなあ、と思うのはまさにこれですね。ポケモンなんて「学校」という遊技場で交換ができなかったら「8.7.7.7」ぐらいの「仕様」のソフトだろ、という。この評価の足並みの揃いっぷりも見事な感じがします。逆にパラッパぐらいあからさまに新しそうなものだと、「これは評価しなくては…!」みたいな意識がはたらきやすいとかっていうのもあるのかもしれません。