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Critique of games | ゲーム関連書籍 集計

ビデオゲームをめぐる問いと思索
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→データ利用上の注意

目次

ゲーム関連書籍出版件数

集計方法

  • 集計日時:2004年12月
  • 当サイトで公開しているゲーム関連書籍をデータソースとして、年度ごとに出版件数を集計した。

簡単なコメント

  • このデータから、確認できることはまず、80年代中盤の盛り上がりです。これは、85年〜86年のファミコンブームとセットになって、ゲームが一般的な文化として急速に普及してきたことを示している、といえるでしょう。とは言っても、83年、84年の出版件数と比べたときに、85年、86年の出版件数がそこまで爆発的に増えていない、というのも注目すべき点で、ゲーム文化がファミコンブーム以前からマイコンゲーム、アーケードゲーム、アナログゲームといった市場によってある程度はすでに成立していたという事情も反映しているのかもしれません。
  • そして、90年代後半〜現在にかけての盛り上がりです。特に2003年はファミコン20周年が記念され、レトロゲームブームなどでの盛り上がりもありましたが、90年代後半以降は、ファミコンで育った世代が大人になってきたころです。彼らが、発言者として文章生産をはじめたり、また業界が成熟したことで多様なジャンルの本が出版されるようになってきたということをあらわしているのかもしれません。
  • そして、このデータの中で注目したいのは93年の突出ではないかと思います。これは単なる私の持論ですが、90年代前半、特に93年〜94年にかけての時期は、ゲーマー達が自らの存在を他メディアとの関係性の中で強く意識しはじめた時期なのではないか、と思っています。雑誌『ゲーム批評』『ゲーム会議』の創刊(ともに94年ごろ)などといったこともありますが、はじめての「ゲーム用語辞典」(93年)が出版されたり、哲学者・社会学者達による本格的なビデオゲームの論考集『人はなぜゲームするのか』(93年)『現代のエスプリ312 ビデオゲームとカラオケ』(93年)などが出版された年でもあります。「ゲーム」についての反省的な問い、意識が成立してきたのがこの頃なのではないでしょうか。(これは次のジャンルごとのクロス集計表を見ていくともう少し明らかに見えるようになります)

このデータのいい加減なところ

  • 元のリストの網羅性がどこまで信頼できるのか。2004年現在だと暫定的に「一番充実したリスト」であるとは思っているが、偏りがあることも事実。

時系列×ジャンルによるクロス集計表

年度 その他 TRPG クソゲー ゲームコミック ゲームデザイン データ 考察 プログラム 影響論 経営・経済 紹介+攻略 就職 紹介 読み物 歴史
1977以前 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1978 1 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0
1979 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0
1980 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1981 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1982 4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 2 0 0
1983 3 0 0 0 0 1 0 2 0 1 2 0 11 0 0
1984 2 0 0 0 0 2 1 1 0 1 0 0 8 0 0
1985 3 0 0 2 0 2 2 1 0 1 8 0 2 0 0
1986 6 0 0 8 0 3 1 0 1 2 2 0 4 0 0
1987 3 1 0 2 0 2 0 0 0 3 1 0 5 1 0
1988 1 0 0 0 0 2 1 1 1 0 3 0 2 1 1
1989 3 1 0 0 0 1 3 0 2 1 1 0 3 0 0
1990 2 2 0 1 1 4 1 1 1 0 2 0 1 2 1
1991 3 1 0 0 1 2 0 0 1 1 2 0 1 1 0
1992 6 1 1 0 0 6 0 0 0 0 0 0 0 1 0
1993 6 1 0 0 0 7 6 0 2 7 0 0 5 5 2
1994 4 1 0 0 3 5 3 0 0 4 0 1 3 3 1
1995 2 0 0 0 1 1 4 0 1 2 0 1 2 4 1
1996 9 0 0 0 2 4 3 0 1 6 0 3 1 3 0
1997 10 1 0 0 1 5 6 0 0 4 1 6 2 3 2
1998 17 0 5 0 1 3 5 0 1 2 1 5 3 1 2
1999 14 0 2 0 1 6 1 0 1 6 0 3 1 5 3
2000 13 0 1 1 1 8 5 0 2 3 0 6 2 8 1
2001 3 0 2 0 1 12 3 0 2 2 0 2 0 10 3
2002 8 0 2 0 3 11 4 0 2 2 0 3 0 4 3
2003 5 0 1 0 5 12 9 0 3 11 0 2 0 2 7
2004 6 0 1 0 2 3 4 0 2 2 0 0 0 0 1
小計 136 9 15 15 23 102 62 7 23 61 25 32 58 54 28

 
 と、3とか5とかばっかり並べられても困るので、「(セルの値)÷(ジャンルごとの総計出版件数)」という計算で百分率に変換しておきます。
 
年度 その他 TRPG クソゲー ゲームコミック ゲームデザイン データ 考察 プログラム 影響論 経営・経済 紹介+攻略 就職 紹介 読み物 歴史
1977以前 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0%
1978 1% 0% 0% 7% 0% 0% 0% 14% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0%
1979 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 4% 0% 0% 0% 0%
1980 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0%
1981 1% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0%
1982 3% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 4% 0% 3% 0% 0%
1983 2% 0% 0% 0% 0% 1% 0% 29% 0% 2% 8% 0% 19% 0% 0%
1984 1% 0% 0% 0% 0% 2% 2% 14% 0% 2% 0% 0% 14% 0% 0%
1985 2% 0% 0% 13% 0% 2% 3% 14% 0% 2% 32% 0% 3% 0% 0%
1986 4% 0% 0% 53% 0% 3% 2% 0% 4% 3% 8% 0% 7% 0% 0%
1987 2% 11% 0% 13% 0% 2% 0% 0% 0% 5% 4% 0% 9% 2% 0%
1988 1% 0% 0% 0% 0% 2% 2% 14% 4% 0% 12% 0% 3% 2% 4%
1989 2% 11% 0% 0% 0% 1% 5% 0% 9% 2% 4% 0% 5% 0% 0%
1990 1% 22% 0% 7% 4% 4% 2% 14% 4% 0% 8% 0% 2% 4% 4%
1991 2% 11% 0% 0% 4% 2% 0% 0% 4% 2% 8% 0% 2% 2% 0%
1992 4% 11% 7% 0% 0% 6% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 2% 0%
1993 4% 11% 0% 0% 0% 7% 10% 0% 9% 11% 0% 0% 9% 9% 7%
1994 3% 11% 0% 0% 13% 5% 5% 0% 0% 7% 0% 3% 5% 6% 4%
1995 1% 0% 0% 0% 4% 1% 6% 0% 4% 3% 0% 3% 3% 7% 4%
1996 7% 0% 0% 0% 9% 4% 5% 0% 4% 10% 0% 9% 2% 6% 0%
1997 7% 11% 0% 0% 4% 5% 10% 0% 0% 7% 4% 19% 3% 6% 7%
1998 13% 0% 33% 0% 4% 3% 8% 0% 4% 3% 4% 16% 5% 2% 7%
1999 10% 0% 13% 0% 4% 6% 2% 0% 4% 10% 0% 9% 2% 9% 11%
2000 10% 0% 7% 7% 4% 8% 8% 0% 9% 5% 0% 19% 3% 15% 4%
2001 2% 0% 13% 0% 4% 12% 5% 0% 9% 3% 0% 6% 0% 19% 11%
2002 6% 0% 13% 0% 13% 11% 6% 0% 9% 3% 0% 9% 0% 7% 11%
2003 4% 0% 7% 0% 22% 12% 15% 0% 13% 18% 0% 6% 0% 4% 25%
2004 4% 0% 7% 0% 9% 3% 6% 0% 9% 3% 0% 0% 0% 0% 4%
小計 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100%
標準偏差 3% 6% 7% 10% 5% 4% 4% 7% 4% 4% 7% 6% 5% 5% 6%
最大値 13% 22% 33% 53% 22% 12% 15% 29% 13% 18% 32% 19% 19% 19% 25%

 
 と、ついでにこちらは、「(セルの値)÷(年度ごとの出版件数)」という計算で。
 
年度 その他 TRPG クソゲー ゲームコミック ゲームデザイン データ 考察 プログラム 影響論 経営・経済 紹介+攻略 就職 紹介 読み物 歴史 小計 標準偏差 最大値
1977以前 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0.000 0%
1978 33% 0% 0% 33% 0% 0% 0% 33% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 100% 0.138 33%
1979 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 100% 0% 0% 0% 0% 100% 0.258 100%
1980 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0.000 0%
1981 100% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 100% 0.258 100%
1982 57% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 14% 0% 29% 0% 0% 100% 0.161 57%
1983 15% 0% 0% 0% 0% 5% 0% 10% 0% 5% 10% 0% 55% 0% 0% 100% 0.142 55%
1984 13% 0% 0% 0% 0% 13% 7% 7% 0% 7% 0% 0% 53% 0% 0% 100% 0.138 53%
1985 14% 0% 0% 10% 0% 10% 10% 5% 0% 5% 38% 0% 10% 0% 0% 100% 0.100 38%
1986 22% 0% 0% 30% 0% 11% 4% 0% 4% 7% 7% 0% 15% 0% 0% 100% 0.092 30%
1987 17% 6% 0% 11% 0% 11% 0% 0% 0% 17% 6% 0% 28% 6% 0% 100% 0.085 28%
1988 8% 0% 0% 0% 0% 15% 8% 8% 8% 0% 23% 0% 15% 8% 8% 100% 0.070 23%
1989 20% 7% 0% 0% 0% 7% 20% 0% 13% 7% 7% 0% 20% 0% 0% 100% 0.080 20%
1990 11% 11% 0% 5% 5% 21% 5% 5% 5% 0% 11% 0% 5% 11% 5% 100% 0.054 21%
1991 23% 8% 0% 0% 8% 15% 0% 0% 8% 8% 15% 0% 8% 8% 0% 100% 0.070 23%
1992 40% 7% 7% 0% 0% 40% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 7% 0% 100% 0.138 40%
1993 15% 2% 0% 0% 0% 17% 15% 0% 5% 17% 0% 0% 12% 12% 5% 100% 0.070 17%
1994 14% 4% 0% 0% 11% 18% 11% 0% 0% 14% 0% 4% 11% 11% 4% 100% 0.063 18%
1995 11% 0% 0% 0% 5% 5% 21% 0% 5% 11% 0% 5% 11% 21% 5% 100% 0.070 21%
1996 28% 0% 0% 0% 6% 13% 9% 0% 3% 19% 0% 9% 3% 9% 0% 100% 0.083 28%
1997 24% 2% 0% 0% 2% 12% 15% 0% 0% 10% 2% 15% 5% 7% 5% 100% 0.072 24%
1998 37% 0% 11% 0% 2% 7% 11% 0% 2% 4% 2% 11% 7% 2% 4% 100% 0.092 37%
1999 33% 0% 5% 0% 2% 14% 2% 0% 2% 14% 0% 7% 2% 12% 7% 100% 0.087 33%
2000 25% 0% 2% 2% 2% 16% 10% 0% 4% 6% 0% 12% 4% 16% 2% 100% 0.075 25%
2001 8% 0% 5% 0% 3% 30% 8% 0% 5% 5% 0% 5% 0% 25% 8% 100% 0.090 30%
2002 19% 0% 5% 0% 7% 26% 10% 0% 5% 5% 0% 7% 0% 10% 7% 100% 0.075 26%
2003 9% 0% 2% 0% 9% 21% 16% 0% 5% 19% 0% 4% 0% 4% 12% 100% 0.074 21%
2004 29% 0% 5% 0% 10% 14% 19% 0% 10% 10% 0% 0% 0% 0% 5% 100% 0.086 29%

集計方法

  • 当サイトで公開しているゲーム関連書籍をデータソースとして、出版年度とジャンル項目に着目し、クロス集計表を作成した。
  • 作成日時:2004年12月
  • 一冊の書籍が複数項目に該当すると思われた場合、両方の項目に一冊ずつプラスしてカウントしている。(たとえば、「歴史」ジャンルかつ「考察」ジャンルであると思われた場合は、「歴史」と「考察」の両方で「1」が増やしている。)
  • ジャンル分類のだいたいの基準は以下のようになっている
    • TRPG:テーブルトークRPGについて書かれた書籍(#網羅性がうさんくさい)
    • クソゲー:「クソゲー」「悪趣味ゲーム」「B級ゲーム」などについて書かれた書籍
    • ゲームコミック:ゲームを題材とした扱っている漫画。(#網羅性がうさんくさい)
    • プログラム:ゲームプログラムについての書籍(#網羅性がうさんくさい)
    • データ:統計資料、白書、年鑑、網羅的なゲームタイトルリストなど
    • 影響論:ゲームの悪影響・好影響などについて論じた書籍
    • ゲームデザイン:「ゲームデザイン」に関して書かれた書籍。
    • 歴史:ゲームの歴史について取り扱っている書籍
    • 考察:「ゲームデザイン」「影響論」「経営・経済」「歴史」などに属さないもので、ゲームについて考察したもの
    • 経営・経済:ゲーム業界について経済的、経営論的角度から書かれた書籍
    • 紹介+攻略:複数のゲームタイトルの紹介に加えて、簡単な攻略記事の載っている書籍(#網羅性がうさんくさい)
    • 就職:ゲーム業界への就職案内を目的とした書籍
    • 紹介:複数のゲームタイトルの紹介を目的とした書籍
    • 読み物:上記のいずれのジャンルにあてはまらないもので、コラムなどを集めた書籍(かなりいい加減な分類項目)
    • その他:上記のいずれのジャンルにあてはまらないもの。

簡単なコメント

  • 93年で「考察」「経営・経済」「紹介」「読み物」などといった分野がいきなりボコッと出版件数が出てきています。また、「歴史」の分野も93年以降、頻繁に出版されるようになってきています。これは先に言った私の持論「「ゲーム」についての反省的な問い、意識が成立してきた」という議論のちょっとした裏づけとして捉えてよいかと思います。
  • 93年以外にも、90年代中盤にかけて徐々に定着していったジャンルとして「ゲームデザイン」「就職」といったジャンルが挙げられます。これは非常にセットとしてはわかりやすくて、90年代中盤から、「ゲームを作りたい人」達を対象にした出版物が成り立つようになってきたのだ、ということが明らかにわかるでしょう。
  • 「紹介+攻略」というジャンルはかなり独自設定ですみません。ただ、このようなジャンルを設定してあるのには一応の意味がありまして、これは80年代中盤における特殊なゲーム関連書籍のジャンルを指す言葉が必要だろうと思ったわけです。出版件数を見ると、80年代中盤に盛り上がり、その後急速に落ち込んでいるのが見えるだろうと思います。このような「紹介」と「攻略」が一緒になったゲームの本が出版される、というのは「ファミコン通信」「ファミリーコンピュータマガジン」といったゲーム雑誌がメジャー化するまでの過渡期的な現象としてフォローすることができるだろうと思います。ゲーム雑誌の歴史的に言えば、70年代末から「アスキー」や「I/O」といったマイコン雑誌がありましたが、それらとは別に紹介+攻略を主な記事内容とする家庭用ゲームを対象とした雑誌が勃興してくるのが、85・86年頃ということになります。
  • 「クソゲー」のジャンルですが、これは92年にちょろっと出版があり、98年にはいきなり、5件も出版されております。その後、99年に2件、2000年に1件、2001年に2件…とジャンルとして定期的に出版されていっていることが確認できます。「98年」にいきなり出版件数が増えているのは、『超クソゲー』の影響だろうと思われます。この一冊が、「クソゲー」をB級文化として、ネタ的に楽しんでしまおう、という文化が定着に大きな貢献をしたのは間違いないでしょう。

このデータのいい加減なところ

  • 母集団:「ゲーム関連書籍」リストのピックアップが私の個人的な作業に依拠しているので、元リストの偏りがある。2000年以降からだけ外国語書籍が入っていたり、論文などが気まぐれにはいっていたりする。(とは言っても一応、2004年現在の段階ではネット上で公開されている日本語圏のゲーム関連書籍リストとしては網羅性だけなら最も優れたものではある…はず。)
  • ジャンルわけ:かなり恣意的。分けた人間(私)の勝手な基準にすぎないという点がつらい。たとえば、「TRPG」の項目などはジャンル分けに迷ったため、集計結果がかなりウソっぽくなっている。