Critique Of Games ―ビデオゲームをめぐる問いと思索―

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 ボールドウィン、クラーク[2002]によれば「それぞれ独立して設計でき、しかも全体としては統一的に機能するサブシステムを用いて、複雑な製品やプロセスを構築すること」とされている。経営・経済学分野で、脚光を浴びている概念。
 たとえば、インターフェースが公開され、固定されており世界中どこでも部品を作れるようなパソコンのような製品は、高度にモジュール化された製品であると言える。対して、全体がひとつになっており、部分に分けにくいような、アナログ時計(?)などは統合型の製品であると位置づけられる。
 モジュール化によって生じる利益として次のような議論がある。

  • 仮説1:他の部品の開発状況などとのすりあわせを、気にせずに開発できるようになるため、個々のモジュール(部品)の技術革新が行いやすくなる。例えば、CPU技術者はCPUの速度上昇だけに専念し、HDDの技術者は、HDDの容量増加に専念できるようになるため、技術革新の速度が上昇していくという議論。クオリティのレベル上昇がブーストされる。(技術革新促進説)
  • 仮説2:部品ごとのバリエーションが増えることにより、製品の形のバリエーションも飛躍的に増加する。例えば、スターバックス・コーヒーでは、小さな店舗であるにも拘わらず、2万通り近い組み合わせのメニューを出すことが可能になっている。選択肢/自由度の増加がもたらされるとする説。(財の多様性増加説)
  • 仮説3:モジュール化/標準化の進展により、外部からの調達コストが低下する。これにより、世界中から、最良の部品を調達可能になる。例えばDellコンピュータの部品の調達は、モジュール化の議論抜きに語ることができない。(取引費用説)
  • 仮説4:大量生産によるコストの低下。特にソフトウェア分野で顕著に生じる。(収穫逓増説)

 近年までの情報通信産業などでは、モジュール型製品は特に強いとされている。一方、日本の自動車産業などでは、モジュール化戦略とは逆向きの「すりあわせ」の調整が強いとされている。

ゲームの歴史におけるモジュール化の整理

 では、ゲーム産業におけるモジュール化とはどのようなものだろうか。
 ごくごく大まかにまとめると、3つの段階に整理できるだろう。
 

第一期:ハードとソフトの分離/統合

 古典的なゲームのモジュール化/統合型の議論は、ゲームのソフト(ルール)と、ハード(遊具)の問題からはじめることができる。
 以下、Classic 8-bit/16-bit Topics「ゲームのなかのモダニズム」*1のhally氏は次のようにまとめている。

近代まで職業的なゲームデザイナが存在しえなかった理由はごく単純で、ゲームを個人作品化する手だてがなかったからに他なりません。伝統的なゲーム遊具は、中世後期までにある種の汎用ゲームシステム化を遂げていました。チェス盤、バックギャモン盤、トランプ……といった定型遊具は、このころ多種のゲームに使用されることが珍しくなくなっており、新しいゲームの考案にあたって専用遊具が考案されるようなことは、滅多になくなっていたのです。つまりソフトウェア (ルール) のデザインがハードウェア (遊具) のデザインから遊離していたわけです。このソフトウェアはもちろん誰にでも手軽にコピーし改変できるものでした。

こうした汎用化の流れから多少なりとも外れていたのは、ルネサンス後期にイタリアにもたらされた「鵞鳥のゲーム」と呼ばれる絵双六くらいでしょう。絵双六は描き出される内容によってゲームのストーリラインが変化するわけですから、その意味でハードとソフトが不可分なものであるといえます。

第二期:コンピュータ・ゲームの誕生

 柳川範之[2002]によれば、「ゲーム産業は全体として一つの『モジュール化』されたシステムとして見ることができる」という。ここで柳川が指しているのは、具体的には任天堂やソニーのようなハードメーカーと、ナムコやスクウェアエニックスのようなソフトメーカーが独立して開発を行える状況のことである。*2
 「ハードの仕様の固定化によって、ハードメーカーとソフトメーカーのあいだで、細かい情報やアイディアの交換を行う必要性が大幅に低減し、ソフトメーカーの自由度を高めることが可能になった。」という。

第三期:開発過程の標準化

 1990年代後半からゲーム産業に生じている第三の事態として位置づけられるのが、ゲーム開発エンジン(エディタ)産業の発達である。
 Quake3エンジン、Half-lifeエンジンなど、ゲーム開発のためのミドルウェア/エディタが北米を中心に高度な発達を遂げたことで、ゲーム開発の規模の効率化が図られると同時に、これを利用した開発の水平分業化が進展していると言われている。北米の水平分業化のパワーが大きな力を持ち、ゲーム開発過程のモジュール化を高く評価する議論も多い。
 一方、この数年は、Nintendo DSの大ヒットなどに象徴されるように、小規模な垂直統合型の開発モデルへの評価も高まっており、ゲーム産業においては、必ずしもモジュール化一辺倒という形の議論にはなっていない。

ゲーム産業の国際分業の可能性

 また、ゲーム開発過程におけるモジュール化は、ゲーム開発の国際分業においても大きな問題となる。中国、韓国、インドなどの企業と連携した、ゲームの国際分業は現在急速な勢いですすめられている。だが、中村彰憲によればキャラクターやシナリオなど高度にその文化ごとのコンクストに依存するような要素の分業化は難しく、サービス産業の「フラット化」(トマス・フリードマン)は、コンテンツ産業においてどこまで可能なのか、今後の状況が注目される。

参考文献/関連文献

  • キム・クラーク,カーリス・ボールドウィン / 安藤 晴彦訳 『デザイン・ルールモジュール化パワー』東洋経済新報社 2004
  • 青木昌彦,安藤晴彦[編著] 『モジュール化―新しい産業アーキテクチャの本質』2002 東洋経済新報社
    • カーリス・Y・ボールドウィン、キム・B・クラーク 第二章「モジュール化時代の経営」
    • 柳川範之 第五章「ゲーム産業はいかにして成功したか――アーキテクチャ競争の役割」
  • 藤本 隆宏 『能力構築競争-日本の自動車産業はなぜ強いのか』中公新書 2003


*1 http://d.hatena.ne.jp/hally/20051213
*2 1960年代〜70年代においては、必ずしもソフト/ハードの分離がコンピュータ・ゲームであたりまえのことではなかった点についての言及ももちろんある。
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最終更新: 2008-01-31 (木) 09:53:27 (3373d)